君もアンタもあたしも僕も



振られた。人生で初めて振られた。仁王雅治という女たらしに。そのうち振られるなら私から振ってやろうと思ってたのに結局別れを切り出せないでいたら案の定振られた。

「お前にはもっといい人が居る」とかそういうくさい台詞でも言ったらぶん殴ってやろうと思ってたのにあっさり他に女出来たと言われた。なんという。あまりにもしれっとして言うもんだからいつものノリで「あー、うん分かったー」みたいな感じで電話を切った。その後急に涙止まんなくなってブン太に電話したら、自慢げに「だからアイツはやめろっつったのに」って言われた後に爆笑された。仲のいいブン太が言う程だからきっと最低なんだろう。最低とかどうでもいいんだけどさ。散々馬鹿にされて泣き止んだ後ブン太も仁王も死ねばいいのにって思った。いや、やっぱり仁王は死んだら嫌だな。


そしてずるずるずるずる引きずりまくって一ヶ月。ブン太が彼女に振られたらしい。なんという。泣きながら電話してきたときは超馬鹿にしてやろうとか思ってたけど、話を聞いてたらこの前仁王に振られた時の色々がぶわーってきて何かお互い超号泣した。もうまじ私ら情けないねって言いながら散々泣いた。でも話したりなくて電話代もったいないから会おうってなった。

ブン太はダル着で、最近買ったお気に入りのバイクに乗って来た。相変わらず喧しいバイクだなおい。

「俺ら死ぬ?」
「どっちでもいいわ」
「なんだそれ」

さっきから死ぬ?とかそんなことばっかりブン太は繰り返し口にしていた。その度どっちでもいいって言ってるけど正直死にたくない。私仁王大好きだったけど振られたからって死ぬ程でもないし。

「俺まじアイツいねーと生きていけねえ」
「そんなに好きだったの」
「うん、だってあいつまじ乳でけーよ」
「は」
「もう俺これからどうしろっつーわけ」
「知らんがな」

さっき一緒になって泣いた涙返せこの野郎、友達じゃなかったら完璧引いてる。まあこういう奴なのは知ってたけど、乳で泣くか。ブン太の話を聞いてたら私が純粋な気がしてきた。私別に仁王のそういうのが良かった訳じゃないし。

「…まあ色々だからいいと思うけど」
「あーあ、つーかお前仁王の何処がよかったわけ?」
「性格?」
「アイツ性格わりーじゃん」
「んー?…顔かも」
「うわーお前最悪、まじおわってんな」
「乳がよかったブン太に言われたくない」
「ですよね」
「ていうか顔が好きだったかもしれないけど本当に好きだったんだよ」
「つーかでもさ、仁王お前と付き合ってる時他の女と遊びまくってたぜ」
「え、まじで?」
「おー、言わなかったけどな」
「最悪、ってかあんたの彼女噂では幸村くんに近づきたかったからアンタと付き合ってたらしいよ」
「え、まじで?俺死にたい」
「私も、私ら見る目ねえー」
「いや、本当にな・・・なあ、俺ら付き合う?」
「え、何で?」
「何かこういうのにありがちじゃね?」
「やだよ、ブン太と付き合うなら死ぬほうがまし」
「うわ、お前最低だな、まあ俺もお前と付き合うとか考えただけで鳥肌たつわ」


あーなんか吹っ切れた。仁王が長いほうがいいっつってたからつけたエクステ明日とろう。本当はボブがしたかったんだ私。そうそう、もう忘れよう、仁王さようなら。




君もアンタも



あたしも僕も


(みんな最低じゃん)


(2009/8/15)
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