私を一番に好きになってくれる人はいない。昔からの確信だった。皆私の隣で違う誰かを見ている。親も友達も、皆そうだった。私は本当に好きでも、皆にとって私は妥協でしかなかった。誰も口には出さないけれど私はきっととても便利な人だろう。私ってそういう人間なんだろうなっていつからか少し諦めれるようにはなっていた。それでも何処か期待していた。無くてはならない存在になりたかった。 「好きだよ」 「・・・嘘だ」 不二が私に好きだと言うのは5回目だった。こう思われることを今まで望んでいた筈なのに、何回言われても私は不二を信じる事は出来なかった。私を好きになる人なんていない。ましてや、誰からも好かれているような人が私を好きになるなんて信じられなかった。 捻くれてしまった私は受け入れることもできず、断ることもできず、慣れない言葉を否定する事しかできなかった。 「やっぱりなかなか信じてもらえないね」 「だって・・・」 人から好かれるということを良く知っている人に本当の事を話せば笑われると思った。回らない頭でらしい言い訳を探す。出て来る言葉はどれも自虐的な言葉ばかりだった。 こんな風に正面から好きだと言ってくれる人なんて今までいなかった。不二の言葉が本心だったとして、手を取ってしまえばきっと私は不二を一番好きになる。今まで必死に繋いできたものがどうでもよくなってしまう気がした。 「僕の事嫌い?」 「そうじゃない・・・・嫌いなわけない、嬉しいよ」 「じゃあ何で駄目なの?」 「・・・何で私なの?だって不二とかモテんのに」 「以外に好かれても別に嬉しくないよ」 「・・・皆好きって言ってくれてるのに?」 「あんなの信用できないよ」 信用出来ない気持ちは分かるけれど、一緒ではなかった。私は誰からも好かれた事がないから信じれなかった。不二はきっと言われすぎているせいで信じられない。 「そんなの、好きって言ってくれてるのに酷くない?」 「別に好きじゃない人に好かれても嬉しくないかな。僕はだけいてくれればいいよ」 不二の目は間違いなく私を捉えている。私にとって魅力的すぎる言葉だった。わたしだけ、そんな風に言ってくれた人なんて一人もいなかった。不二なら本当に私を一番にしてくれるかもしれない。 「ほんと?」 「本当だよ、そんなに信じれない?」 「まさかすぎるから」 「そう?」 「だって誰からも好かれたことないのに」 最後の賭けみたいなものだった。笑われたらやっぱり止めておこうと思った。期待していた。不二を好きになってしまいたかった。 「じゃあ僕がはじめてだね」 嬉しそうに言う不二のいつもの笑顔を見ながら今までの人達が薄れていくのを感じた。 「うん、不二がはじめて」 「僕はが好きだよ」 「ありがとう」 「じゃあ、付き合ってくれる?」 「うん、今まで信じなられなくってごめん」 こんな風に人に思われるのは初めてだった。こんなに人に好かれてると実感できたのも初めてだった。やっと一番になれた。ずっと望んでいた。私はきっと不二を好きになれる。なのに今まで私を一番にしてくれなかった人達が薄れていくのが寂しくて涙が止まらない。
こぼれ落ちるなにか
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