11月に入り一週間が経とうとしていた。もう空気は冷たくてカーディガンを着ないと寒いぐらい。人より寒がりの私はひざ掛けを学校に常備していた。お気に入りのキャラクターのピンク色の可愛い膝掛け。
「さっむ」
机においてる綺麗に畳んであるタオルに顔を埋めると、生地が気持ちよくてですぐ眠気がやってくる。うとうとと気持ちよく眠りそうになったときに前から小さな声でねえ、と声がした。眠たかったので無視するとチョンチョンと肩を叩かれてゆっくり目だけ開けて無愛想に答える。
「なに?」
「何って、プリント」
そこには綺麗な顔した越前君がいて一瞬息が止まりそうになった。慌てて顔をあげる。こんなに近くで越前君を見るのは初めてでまじまじと見てると「何?」と聞かれ、謝ってプリントを受け取った。
「なんで越前君がここに座ってるの?」
「さあ、なんかここの女子が俺の席の前のヤツと話したいから変われって」
「あ〜、なるほど」
「いい迷惑だよね」
はっきりと言い切って越前君はくるりと前を向いた。少し話したかったような気もしたけどまたタオルに顔を埋めて目を瞑る。目を瞑りながら越前君綺麗な顔だったなあ、とか目大きいなあ、とかそんなことばかり考えていた。
「ねえ、それって暖かいの」
また声がかかって顔を上げると、越前君が膝掛けをじいっと見ていた。
「暖かいよ」
「ふうん、そのキャラのやついっぱい持ってるよね」
「うん、好きなの」
「へえ」
「可愛いでしょ?」
「まあ、可愛いんじゃない」
「…越前君寒いの?」
「寒い」
「かしてあげよっか」
「うん」
冗談のつもりで言ったから吃驚してえ、と目を丸めると、貸してくれるっていったじゃんと口を少し尖らせて越前君が拗ねた。越前君は恥ずかしかったのか渡そうとすると膝掛けを強引にとって自分の肩に掛けた。
「うわ、暖かい」
「暖かい生地のやつ選んだからね」
「寒がりなんだ」
「うん」
「俺も寒がり、ていうか、すっごい匂いする」
「え、臭い?」
「ううん、家の匂いみたいな匂い」
「えー、うち無臭だよ」
「すっごいするんだけど」
「えーはずかし、いやだな」
「いいじゃん、暖かいし」
もうちょっとかりるよ、無愛想にそういって越前君は机に突っ伏して目を閉じた。可愛いけど余りにも不釣合いで少し笑ってしまった。
おやすみプリンス
|