千石が柄にも無く落ち込んでいた。テニスの試合で負けたらしい。正直そんな千石を見ても「へえ千石ってそんなにテニス好きだったんだ」としか思わなかった。

「・・・そっか」

思考とは逆に心配げな声を出していた。

「うん、しかも2年生に負けちゃったよ〜、あ〜あ」

千石は落ち込んでいても相変わらずへらへらしていた。

そういえば、「テニスをしてる清純が好き」と彼女に言われた事があると千石が浮気相手である私に言っていた。だからそんなにへこんでるんだろうか。
全くもってどうでもいいと思った私と大違いだ。私は男として千石が好きなだけであって別に千石の友達とか、趣味とか、別にどうでもいい。千石以外に気になるのは千石の彼女くらいだ。
そんな自分が最低な事には気付いていたけどそれでも浮気されている彼女と違う事に、私は少し優越感を感じていた。

「そっか・・・お疲れ様」
「彼女はもっと慰めてくれたんだけどな〜」
「へえ〜、いい彼女だね」

こんな時なんていえば良いのか、私はただの浮気相手だから分からなかった。彼女との差を見せ付けられた気がした。

きょとんとした顔で千石が聞いた。

「彼女の話されるの嫌じゃないの?」
「どうだろ。嫌だって思ってたらなんでしたの?」

嫌で嫌で仕方なかった。それでも弱みを見せたくなかった。私は彼女の話をしないでなんて言える程の立場の人間でもなかった。

「やつあたり?かな」

彼女じゃない私は自分の惨めさを笑って誤魔化すしか出来なかった。










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