唯一長く続いた彼氏、忍足侑士とも関係が終わってしまうときが来た。付き合って2年で、自然消滅になりそうだったから私が連絡をした。
久しぶりに会う侑士は、確かにもう私のものじゃなかった。

「めっちゃ久しぶりちゃう?」
「うん、久しぶり」

連絡がなくても私はまだ何処かで好きだった。だから他の男に手を出すなんてことは絶対しなかった。出せなかった。私の恋人は相変わらず忍足侑士だった。それでも侑士は違った。

「ねえ、いつから付き合ってるの?」
「あー・・・いつやったかな、1ヶ月前くらいちゃうか」
「記念日ぐらい覚えてなよ」
「せやな」

少し前に友達から聞いた。侑士には新しい彼女が居る、と。同じ学校だった、ひとつ下の女だった。友達から聞いた数日後私もその女と侑士を見かけた。彼女は楽しそうに侑士の少し前を歩き眩しいほどの笑顔で笑いかけていた。侑士はそれに対して適当に笑っていた。
侑士の中ではとっくに私なんて終わっていた。

「私たちさあ、いつが別れた日?」

別れ話をしに来た私とは違って侑士は元彼女と会っているだけだった。彼女が出来た事とかそんな事はどうでもよくないけどどうでもいい。そんな事より自然消滅で終わらせようとしたのが気に入らなかった。

「あー、なあ、どうやろ」
「そういう話一回もしてないよね」
「え?もしかして別れてないつもりやった?」
「そういうつもりじゃないけど」

そういうつもりだった。少なくとも侑士に彼女がいると聞くまでは。それでも侑士の本当に吃驚したような言い方を聞くとそんな事情けなくて言えなかった。別れ話をするつもりだった覚悟も今は何処かに消えていってしまった。こうして改めてあった意味なんて無かった。

「俺んちにあるお前の荷物どうする?」
「あ、そっか。取りに行こうか」
「あー」
「なんかまずいの?」
「彼女と同棲してんねん、なんか家帰りたくないとかいうてずっと居んねんな」
「あー・・・へえ、じゃあ宅急便で送って」

2年付き合っても出来なかった同棲を、一ヶ月も付き合っていない彼女がしてるのかと思うと死にたくなった。今までの楽しかった思い出すら真っ黒になった。

「じゃあ、またね」

またなんて無い事は気付いていた。

「ん、ほなまた」

まだ私は何処かの好きな気持ちを棄てる事が出来ない。










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