「お前さあ」 「何?」 「俺といて楽しいの?」 楽しくなかった。何をしていても。 「楽しいよ」 「ふーん」 「なんで?」 「なんとなく?そんな気がしたから」 「あはは、ないない、ないよ」 楽しいと口にすれば余計に楽しくなくなった。笑おうと思えば思うほどうまく笑えない気がした。もう全部いらないと思っているのに、何ひとつやめられない。家族も、友達も、仕事も、そこまで好きじゃないけど付き合ったブン太も、全部もういらないのに。どれが無くなったって私は生きていけると思う。それなのに連絡が来れば会っていた。それどころか自分から連絡したりしていた。こんなこともう何もしたくないのに何をしていても楽しくなんてないのに。それでも必死だった。 「え、ブン太は?」 「楽しいけど、だって付き合ってんだし」 「そうだね」 「そうだねって」 返しひとつひとつが面倒だった。ブン太が嫌いなわけじゃないけれど、いつでも別れようと思えば別れられる。付き合う時からそうだった。 「俺のこと好き?」 「ん?うん」 「うんじゃねえじゃん」 「好き」 何も考えたくないし、何もしたくない。誰にも会いたくない。だけど私はきっと明日もこんな事を考えながらブン太と会う。いつでも別れられるのに結婚してもいい気がした。どうでもいいからなのか好きだからなのか自分の事なのに分からない。私は矛盾している。 |